台湾IT大臣オードリー・タン氏による「文化多元化」を語るー「脳内トラベル台湾」トークイベント

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台湾IT大臣オードリー・タン氏による「文化多元化」を語るー「脳内トラベル台湾」トークイベント

2021-08-31

「脳内トラベル台湾」特別企画

台湾IT大臣オードリー・タン氏による「文化多元化」を語る

 

    台湾文化コンテンツの産業化と国際化を促進する独立行政法人台湾クリエイティブ.コンテンツ.エイジェンシー(以下、TAICCA読み:タイカ)は、台湾の文化やコンテンツを日本国内へ広める施策「脳内トラベル台湾」を、誠品生活日本橋をはじめとした書店にて2021年8月16日(月)から9月15日(水)の期間限定で実施。開催初日には、台湾のデジタル担当相オードリー・タン氏を迎え、誠品生活日本橋(東京都中央区)およびオンラインにてトークイベントを実施しました。

 

 トークイベントはMCの平澤志帆さん(以下、平澤)と問答形式で行い、通訳の潮田耕一さんを通じて、オードリー・タンさん(以下、タン)は「文化の多元化」を中心に、オススメの台湾作品、影響を与えられた日本作品を語ってくれました。また、参加する観客からの質問にも親身になっていろいろ答えてくれました。

 

 


 

「台北に来たらぜひ寄ってほしいところがあります。」


 

タン:こんにちは、今回、皆さんとオンラインで繋がってお話しすることができて、とてもうれしく思います。

 

平澤:ここ数年、日本で人気の海外旅行先といえば「台湾」はいつも上位でした。コロナ前の2019年には215万人以上の人が台湾を訪れています。しかし新型コロナウィルスの影響で海外旅行ができなくなり、台湾にも行くことができず、私もそうですが多くの人が「台湾ロス」になっています。

今すぐには行けないけど、生活のいろんな時間で台湾を楽しんでいただくこの「脳内トラベル台湾」イベントですが、ここからの時間は、オードリー・タンさんにご自身の思い出も交えつつ、ぜひガイドとしてお話しいただければ嬉しいです。

まずは、海外から友人が来たときに連れて行く場所はどこですか?オススメの台湾観光スポットを教えてください。

 

タン:私のオフィスです。私のオフィスは台北の仁愛路三段99号にありまして、「ソーシャルイノベーションラボ」という、台北市の中心地に位置します。その建物は日本統治時代には工業研究院だったが、中華民国統治時代には空軍基地となっていました。現在は、台湾の文化部、経済部などの部署が共同で使用しており、VR、音声実験など最先端なテクノロジーや社会再生、環境永久発展に関するすべてのプロジェクト・コンテンツを制作するラボです。創意的なプロジェクトであれば、誰でもここを使用して、そして開発されたものを市民に向けて共有することができます。みなさんも台北にいらっしゃいましたら、ぜひこちらに寄ってみてください。

 

平澤:ありがとうございます。ここはおそらく見ていらっしゃる皆さんなかなか行かれたことのない場所だと思いますので、ぜひ台湾に行けるときに皆さん、足を運んでいただければと思います。

続いては、今回のテーマでもある「文化内容」についてお伺いします。台湾はよく多元文化共存の社会と言われています。オードリー・タンさんにとっての「多元文化」はどんなものでしょうか?
 

タン:すでに、多元文化(multi-cultural)だけでなく、トランスカルチュラル(trans cultural)というキーワードも言及しないといけません。それは、もともと自分のカルチャーがあるわけですが、ほかの文化の角度や立場から自分たちの育った環境などを見つめ直すといった角度も持つという意味合いです。ただいろんな文化や民族が共存しているだけでなく、一つ一つの文化は、お互いの立場から見つめあえるということです。

例えばタピオカミルクティーもそうですが、タピオカの色は黒でも白でもいいですし、使用されるのはお茶じゃなくても、豆乳だっていいでしょう。いろんなカルチャーから来たもので組み合わせてもいいですし、作り方には創意性があれば、いいと思います。

 

 

 

「インターネットはクリエーターにポジティブな影響を与えたと思います。」


 

平澤:台湾ではたくさんの素晴らしい作品が多元文化やマイノリティが取り上げられています。例えば台湾で現在ドラマ化された歴史小説「フォルモサに咲く花」は19世紀原住民・閩南人・客家人と西洋人の物語となっております。また最近日本で上映された映画「親愛なる君へ」は同性愛者と家族の物語。ゲームから小説・ドラマになり、映画が8月に日本で上映された「返校」では白色テロ時代の物語となっているんですけれとも、なぜ台湾ではこのような多元文化を話題にする作品が次々と出版されると思いますか?オードリー・タンさんの意見を伺いたいです。

 

タン:一番のポイントは、創造する過程の中には、最初から異なる文化の人々と異なる角度を持つ人々と共同に創作しているのです。昔の小説家や作曲家などのクリエーターは、自分の内面的なものを表現すると思いますが、今は、インターネットの発展により、台湾のクリエーター、日本のクリエーターも同じだと思いますが、創作の最初の段階、またコンセプトや概念の段階からすでにインターネットで発表したり、人々と討論や評論しながら、共同制作のようなことを行っているのではないでしょうか。この創作過程の公開によって、さまざまな異文化を持つ人が参加したり、違う観点が参与したりすることになり、作者自身が経験していないことでも、このようなプロセスにより取り込まれて豊富で多様な物語ができると思います。これは、インターネットの創作に与えたポジティブな側面ではないでしょうか。

 

平澤:ちなみに、オードリー・タンさんにとってどの作品が一番印象に残り、影響をうけていますか?

 

タン:先ほどの記者会見でも話したように、私は、羅大佑という歌手の音楽に影響を与えられたと思います。彼の早期の歌、例えば『未來的主人翁』、『亞細亞的孤兒』、『戀曲1980』、『光陰的故事』などは、小さい頃から聞いてた曲です。うれしいことに、台湾現在の音楽、バンドもとても素晴らしいです。例えば告五人、四分衛、阿爆などの新世代ミュージシャンは、今でも創作し続けている羅大佑氏の曲をリミックスしたりしていて、また新しい作品になっていきます。また、羅大佑氏のパフォーマンス映像も、先ほど話しました「ソーシャルイノベーションラボ」で、3次元モデリング技術によってオンライン・オフラインをミックスするような体験を楽しんでいただけます。私の子供の頃の記憶は、今になっても、このような技術によって生き生きとするような形で蘇っています。

 

告五人〈披星戴月的想你〉

 

 

四分衛〈當我們不在一起〉


 

阿爆〈Thank You〉


 

平澤:参加されている皆さんも、台湾に思いをよせ、台湾に行きたいなとか、気持ちが盛り上がってきていると思います。今回の「脳内トラベル台湾」では、日本で出版されている素晴らしい台湾の作品を紹介しています。このイベントを開催している誠品商店日本橋にもブースを設けてご紹介をしています。インタビュー本をはじめ、オードリーさんに関する本も多数日本で発売されていますが、ぜひ、このイベントの後ご覧になってくださいね。オードリー・タンさんにお伺いします、台湾の作品の中で、日本の読者にオススメの作品はありますか?

 

タン:陳耀昌医師の作品『フォルモサに咲く花』(原題:傀儡花)がオススメです。実はこちらは「花シリーズ」で、『獅頭花』、『苦楝花』と合わせて三作となります。陳耀昌医師がほかにもたくさん作品がありまして、今私が読んでいる真っ最中のは台湾で発行されたばかりの『島之曦』で、台湾の民主化の話です。これらの作品は、まだ日本語に翻訳されていないのもあって、ただいま翻訳中のもありまして、機会があれば皆さん、ぜひ読んでみてください。


 

 

フォルモサに咲く花』著:陳 耀昌/訳:下村 作次郎(東方書店)

 

 


 

平澤:こちらの『フォルモサに咲く花』は、台湾で「斯卡羅 Seqalu: Formosa 1867」というドラマ化されて、現在放送中です。2021年8月月末にサービス開始される予定の台湾国際配信サービス「Taiwan+」では、日本でも見られます。ぜひご注目いただきたいです。

続いては、お伺いしたいのですが、好きな日本人作家や日本の作品はありますか?

 

タン:若い頃は村上春樹氏の作品が好きですが、日本語が不勉強で、翻訳家賴明珠先生の翻訳で読んでいました。作家と翻訳家の共同創作のようだと言われたこともあるのですが、それもそれで楽しませていただきました。その中には、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』には結構影響を与えられたと思います。そこから、日本のSF作品も読みまして、『攻殻機動隊』、『新世紀エヴァンゲリオン』などの大衆文化作品も好きです。これを聞いたら私がどのようなジャンルが好きなのが分かりやすいと思います、やはりSFが好きですね。SF以外によく読むのは、村上春樹さんの作品だと思います。

 

平澤:ありがとうございます。今日は実は、皆さんから事前に質問を受付させていただいたので、ここからは、ご覧いただいている皆さんからの質問をオードリー・タンさんにお答えいただければと思います。

まず、なおこさんから質問をいただきました。「台湾の方々のステイホームの楽しみ方をお聞きしたいです」という質問をいただきました。台湾は新型コロナウィルス対策で成功を収めていることは、日本でもたくさん報道をされています。今年に入って感染が拡大しても3ヶ月もかからずに抑制に成功をしています。オードリー・タンさん自身もマスク購入アプリの開発やワクチン接種予約システムを主導されご活躍は日本にも届いていましたが、台湾の方々は、ステイホームの楽しみ方はどうですか?

 

タン:先ほどは通訳さんの創作(笑)で、ホームステイの話かと思いまして、20ヶ国回ってカウチサーフィンしてたことを話そうと思いましたが、違いましたね(笑)でも考えれば、ステイホームとカウチサーフィンは、ちょっと似てると思います。私は今、目が覚めたらまずアメリカ州の方々と一緒に仕事して、お昼に近づけると、まさに今、このトークイベントを行う時間になったら、日本などのアジアの皆さんと仕事したり交流し、そして日が暮れると、今度はヨーロッパやアフリカの方々と仕事したりします。20代若い頃、世界各国にカウチサーフィンしたことを、今は一日の中に行うようになっている気分です。タイムスリップではなく、タイムゾーン・トラベルですね。


 

「他者にレッテルを貼るのではなく、共通の経験を通して、異なる他人とでもコミュニケーションが可能になります」


 

平澤:ありがとうございます!おそらくステイホーム中には大変忙しいですよね。続いては、kentaさんからの質問です。秋口から台湾赴任を控えているkentaさんですが、「世界中で多様性が叫ばれる中、自国のアイデンティティ、DNAを台湾は文化的な背景の中でどのようなバランスで保っていくのか?またどのようなバランスが必要なのか見解をお聞かせて下さい。」

 

タン:虹の独特性は多分、この色もあの色もあるというところではなく、すべての色を平等に発信して、公平に混ざり合い、一つになっていくことだと思います。台湾のDNAは?という質問を聞いたとき、それは、人類のDNA、ホモ・サピエンスのDNAってことじゃないですかと思いました。

 

平澤:ほかにも文化・多様性に関する質問をいただいております。Minamiさんからのです。「多様性、異なるもの同士の共存について、日本は台湾に学ばなければいけない部分がたくさんあると思います。自分とは異なる相手を認めることが第一歩だと思いますが、さらにその先に進むために必要なのはどんなものだと考えますか?それこそ、「文化」はその役割を担う1つになり得るのではないかと思いますが、どう思われますか?」

 

タン:その通りだと思います。先ほど話しました「トランスカルチュラル」もそうです、自分と異なる文化の人を尊重するだけでなく、その異なる文化・見方の中に入って、その角度・立場から自分自身を見つめ直すということです。つまり、お互いに「主体」であるという概念です。もし、他人に対してこのような概念で捉えたら、さまざまな誤解・衝突が解消され、共同創作の素材にもなると思います。例えば台湾の同性婚法制化もこのようなアプローチで、年配の方々、若い世代、さまざまな異なる価値観を融合させ、社会全体はより他者の角度から見るようになります。

このように、他者にレッテルを貼って、あなたはこう、私はこう、という区別ではなく、共通の経験を通して、異なる他人とでもコミュニケーションが可能になります。例えば、この前沖縄に行ったときに台風に遭ったなあとか、台湾も台風たくさんあるなぁ、日本でも台湾でも台風や地震を経験したことがあるから、そこから、共通のことが生まれると思います。この共通の経験は、お互いに「私はこうです、あなたはこうです」ということを言わず、経験を通してお互いのことを理解しようという気持ちがある前提で成立します。

 

平澤:ありがとうございます。これからふじさんの質問もちょっと繋がります。「デルタ株の猛威で日本はコロナでのダメージも大きいのですが、女性や社会的弱者に対する脅威を感じるような事件も起こり、精神的にも辛い日々です。どうすれば多くの人に人権の大切さを伝えられると思われますか?」

 

タン:二つの側面から言えると思います。まずは自分自身を好きでいて、自分自身を支えることです。それに、自分に直面した不公平なことを皆で公共の場で討論し、話し合うようなことに変えていくことです。例えば、今、このトークイベントの場に提起するのもそうです。ここにはいろんな人が見ていて、メディアもいます。よりたくさんの人に気付かせて、考えるようになってもらって、これはいけない、このようなあってはならないことをどうやって減らすかとみんなで考えるようになったら、あなたはただ一人でこの社会的構造に対抗することがなくなり、逆にあなたはこのような行けないことが発生していることに気付く最初の一人になります。また、あなたは自ら経験したことから、ほかの人に教えたり、リードするような立場にもなります。


 

 

 


 

平澤:続いては、ウーライさんからの質問です。オードリー・タンさんの本をたくさん読みました!というウーライさんからは、「民主主義において、公共の利益と個人の自由は、どちらが優先されますか?」という質問をいただきました。

 

タン:個人の自由がなければ、公共の利益も実現できません。個人の自由は、公共の利益の前提でもあります。そうでなければ、公共の利益はただ、一部の人間は多くの人をコントロールするための言い訳に過ぎません。

例えば先話した羅大佑氏ですが、「鹿港小鎮」という曲の最後のフレーズは「子子孫孫永保佑 世世代代傳香火(子々孫々永遠にご加護があるように 仏壇へのお香が代々途絶えないように)」となっています。これは実は羅さんの創作ではなく、3、4000年前からよく生活道具に刻まれた言葉です。これは、当時このような道具を発明した人々は、この創作の自由から生まれた道具によって生活がより良くなったのはもちろん、この創作の自由はここで絶つのでなく、後の世代の人々にも、この創作の自由や発明を続けてほしい、このような発明によってよりいい生活ができて、そして自らの自由を手に入れ、更なる作品が生まれるように、という思いが込まれています。ですので、公共の利益を話すと、私に思い浮かべるのは、今手に入れた自由で、どのような創作ができる、どのような作品が生まれる、そして後世の人々にはこの自由につなげて、どうやって更なる自由になろうということです。これは、私にとっての公共の利益そのものです。

 

平澤:ありがとうございます。実はたくさんの質問がありますけれとも、お時間が迫って参りました。最後に、オードリー・タンさんにはぜひ、今回のトークイベントの感想と、日本の皆さんにメッセージをお願いします。

 

タン:このような機会で皆さんと繋がって話せるのがとてもうれしく思います。先ほど話したように、自由というのは、恐怖から逃れる自由、独裁から逃れる自由、などのネガティブなニュアンスの自由だけでなく、自ら繋げたい人、繋げたいこと、繋げたい場所と繋げられる、積極的な、ポジティブな自由はもっと重要だと思います。

今は、インターネットを使って繋げることができて、カメラもあって照明も綺麗ですが、やはり実際に面と向かって、同じ場所にいる状況ではありません。こういう時は、お互いに共通の経験を通して、例えばマスクをしたり、ステイホームしたり、地震や台風を経験したりしたことによって一体感が生まれます。

今日はただの始まりだと思います。日本がワクチンを提供したことに感謝しています。お蔭様で私も無事にワクチンを打つことができました。残念ながら、防疫のため今回の東京オリンピックへ出席することができなくなりましたが、年内には必ず実際に日本に行きます。その際、今日話したことを面と向かって皆さんとより深く討論したいと思います。今日は本当にありがとうございました。

今日、皆さんのご参加には感謝しています。そして、司会者さん、通訳さん、カメラマンさん、設備の方々も、ありがとうございました。

 

 

 

トークイベントの動画は、TAICCAのYouTubeチャンネルにてご覧いただきます。

 



 

 

 

 

脳内トラベル台湾

 

期間:2021/8/16~9/15

参加書店:

誠品生活日本橋  8/16~9/15

本屋B&B 8/16~8/31

ダ・ヴィンチストア 9/1~9/15

 

トークイベント登壇ゲスト:

オードリー・タンさん/乃南アサさん/池澤春菜さん/内沼晋太郎さん *順不同

 

特設サイト:https://nounai-travel-taiwan.taicca.tw/

 

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